オチがなくてよい日記

思っていることをできるだけ取り繕わない形でかくばしょです。日記はむりなので週記くらいにしたい。

岸田教団のライブレポートを書いて送った話

久々にこのブログ開きましたね。大分空いていてすみません。
またゆるゆる再開したい。

 

 

 

岸田教団のライブレポ投稿企画、発表になってましたね。
実はコレ投稿してたんですよ!!負けてしまいました、くやしい。大賞のゲンさん、Twitterで見たことあるし評論系の人って知ってたので、取って当然!ってところはあれど、でも悔しいですね!

特別賞の人もそれぞれの曲に思いのたけを書いてたり、やっぱ女性の文章はいい感じにプリミティブ感情にドリフトするのが上手いなあと思ったりして負けを痛感しています。でもくやしい!


これ、知り合いが「書く」って言ってて、「にしさんも書かないんですか」ってずっと煽られてて、締切日にようやく火が点いて「おおおおやったるわ!!!」っつって書いたりしました。結果締め切り5分過ぎたんですけど。

なんにせよ、これを書いたのはめちゃくちゃ自分にとっていい経験になったので、今後もこういうことはやっていきたいと思っています。自分の書いた文章が好きなバンドの人達に目を通してもらえたってことが非常に嬉しいです。有り難い。

投稿の規約見たけど、投稿した文章を他で公開しても良さそうなんで、供養も兼ねてここに置いておこうと思います。結構気に入っています。

 

 

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「岸田教団ライブ「MOD」FINAL レポ」

 

 

おい、お前、ウソだろ?あの岸田教団の川崎ライブに行かなかったのか?

次の週に例大祭があるから?先週ライブに行ったから?最近の岸田はプロになったからよくわからない?うた祭で聞けるからいい?

東方アレンジって何年前の話をしてんのかって?令和だよって?

 

 

岸田がチッタに立つ。

それにどれほどの意味があることなのか。

お前がもし元ニコ厨で、元東方の厄介オタクで、FloweringNightとかいうライブに行ったことがある人間だったのなら、流石に分かるよな?

 

あの岸田教団が東方アレンジ"だけ"でツアーをやったんだ。東方アレンジ"だけ"だぞ。

しかも4ヶ月前に一度、新作を引っさげたツアーの初日に、既に一度、12年目にして初めての東方アレンジだけのライブをやってる。

二度目だ。既にやっているんだ。それを受けてのツアーなんだ、そのファイナルが川崎CLUB CITTA'だったんだよ。

「俺たち」を呼んでたってことが分かるよな?

 

 

なあ。お前、俺の言葉の意味がわかるんだろ。わかるんだろ?なんで来なかったんだ? もう一度言うよ、なんで来なかったんだ?

 

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2019年09月28日。

川崎CLUB CITTA'で、岸田教団&THE明星ロケッツによる『東方アレンジ限定ライブツアー"MOD"』のツアーファイナルが行われた。

数々のアニメOPを手掛け(先日「とある科学の超電磁砲T」のEDを担当することも発表された)、シーンに確実に楔を打ち込み続けているメジャーロックバンドである彼らが、そのルーツである「東方Project」アレンジ曲のみでライブツアーを敢行した。

なぜ今、なぜこのタイミングで。メジャーの側面から彼らを知った人々はそう思うのかもしれない。

 

彼らはワーナーミュージック・ジャパンと契約するプロのロックバンド「岸田教団&THE明星ロケッツ」であるが、

同時に、東方Projectを愛する東方アレンジの同人サークル「岸田教団&THE明星ロケッツ」だった。

そんなことってあり得るのか?驚くべきことにあり得た、あり得てしまった。このライブはその証明だった。

フロアに、シーンに、世界に向けて今一度「俺たちは東方アレンジの岸田教団&THE明星ロケッツだ」と叫んだのだ。あのフロアに居た私はそう確信している。

 

 

PC98からWindowsへ移った最初の東方作品「東方紅魔郷」の、最初に流れるタイトル曲「紅より儚い永遠」で彼らは入場した。

それはストレートな愛の表明であり、同時に、ココから新たに"東方アレンジを仕切り直す"という意思表明のようにも感じられた。

曲が始まる前からもう既に私は「そんな真っ直ぐな愛の告白するようなバンドじゃなかったじゃない…!」と既に感極まっている、

 

MCもなく始まった一曲目は「SPEED GRAPHER」。特徴的なイントロに、フロアが歓声を上げる。アレンジ元の原曲「風神少女」は大きな翼を持つ鴉天狗のキャラクター、射命丸文のテーマ曲だ。そして、射命丸文の幾つかあるテーマ曲の1つをアレンジしているのが岸田教団の代表曲「明星ロケット」だ。「SPEED GRAPHER」の歌詞にも明示的に「明星」という単語が使われている。

岸田教団&THE明星ロケッツが東方アレンジのライブをやるなら、そのファイナルであるなら、一曲目はこの曲しか無いのだ。観客もそのことを一瞬で理解し、待ってましたと言わんばかりの歓声を上げる。

爽やかなアッパーチューンから続いて激しいサウンドの「メイドと血の懐中時計」、突然Bメロからサビに行く直前に無音が訪れた。

ブレイクだ。バンドと会場が一体となって世界を止めた。

この曲の発表から11年、メジャーシーンに生きる中で卓越した演奏技術を身に着けた彼らのそれは、最初に収録された時よりも圧倒的な力で世界を止め、そしてフロアもそれに応えたのだ。演奏者と観客が一体となって作り上げる、コレがライブの本当の魅力だと言っていい。

上がっていく会場のボルテージはダンサブルなナンバー「緋色のDance」で加速度を増していく。

この、「SPPED GRAPHER」「メイドと血の懐中時計」「緋色のDance」という曲順は、5月に行われた「再起動:弾幕祭」の最初の三曲と同じだ。弾幕祭を終えて東方アレンジのみのツアーをやると発表してからの4ヶ月、この三曲で私達はどこまで変わったのか、どこまで”Modify”出来ているかを私達に見せつけるようにも思えた。

更に言えば2013年に発表された「きしだきょうだんのベスト!」においても、この三曲は全く同じ並び順で収録されている。2013年、2019年5月、そして9月と、彼らは常に技術の進化を求め続けながらも、その根底にあるものはずっと変わっていないことがわかる。

 

本日のメンバーは全体的に黒を貴重とした衣装、ワーナーの公式サイトで公開されているメンバーの写真のイメージに近い。近年のビジュアルはichigoがプロデュースしている。Vo.のichigoは黒のドレスにジャケットを羽織った、シックかつ可愛すぎないスマートなカッコよさが特徴的だ。

だが、Gt.のhayapiだけが白い花柄のシャツ。とても目立つ。

hayapi「ichigoさんが持ってきたのは黒の花柄だけど、黒は照明で光らなくて目立たないから嫌だ」

ichigo「これで本番5分前に大げんかしてた」

岸田「どうでもよくない?なんでそんなことで揉めてんの?って入っていったら」

ichigo「『じゃあ口出してくんじゃねえよ!!』ってブチギレ。ヘイトが何故か全部岸田さんにいくのね」

この”アンコントローラブルな奴しか居ない”エピソードも岸田教団&THE明星ロケッツを象徴するものと言ってもいい。岸田"信者"はこの特攻野郎Aチーム的なエピソードを常に欲している。RebootとModifyを超えても未だ変わらないことに本当に嬉しくなってしまう。

ただ1つ、ichigoが「じゃあ次は白の花がらのキラキラした派手な服持ってくるかーー、って私も分かるようになったよ」と述べた一言が、Rebootで行われた”それぞれの管轄以外のことに口を出す、それで喧嘩になってもいい”というバンドにとっての大きな山を超えた彼女、彼らだからこそ言い合える一言であることに気づき、フロアの中で顔がくしゃくしゃになってしまった。

 

ライブは続いていく。「Ancent Flower」は2017年発表の曲、そこから「ピュアヒューリーズ」、「CROWN PIECE」と、最新のナンバーが続く。

此処最近の岸田教団の東方アレンジには、ステージに東方キャラが見える。

それまで、東方アレンジオンリーライブをやってことなかったという側面が大きいのかもしれないが、これ迄私自身は岸田教団の東方アレンジに対して、すべて「岸田教団の曲」になってしまう、という長所と短所を感じていた。東方アレンジには「原作のイメージをどれだけ重視するか/無視するか」という観点があり、重視する楽曲は全体の世界観、その歌は誰にあてられ、誰のものなのかと言うのを非常に重視する。岸田教団の東方アレンジには、他サークルに比べてその要素は決して強くはなかった。

ただ、この1,2年の岸田東方アレンジには、ステージにそのキャラクターが視えるのだ。「CROWN PIECE」はアレンジ元のキャラクター「クラウンピース」の人を喰ったような性格、モチーフを、カヨコのアレンジ、ichigoの歌詞が十全に表現している。此処にさらに岸田による圧のかかったアレンジが加わることで、曲の表現力が何倍にも増している。

CLUB CITTA'名物のミラーボールが回る中、ステージに座って歌い上げるichigoの後ろには、自由奔放に飛び回りながらもその奥に憂いのあるキャラクター、クラウンピースの姿が見えた。これが12年の厚みなんだと、ダンサブルな曲調に踊り狂うフロアの中で何故かステージを見つめて涙を流してしまった。

 

MCをはさみ、アレンジ元キャラの「霧雨魔理沙」の不器用だが真っ直ぐさが現れた楽曲「マスタースパーク」でライブは再開。ファンの中で”魔鈍器”と呼ばれる「知ってる?魔法書は鈍器にもなるのよ」、原曲は東方ファンたちの中で随一の人気を誇る「U.Nオーエンは彼女なのか?」、そしてあまりライブで演奏されることのなかった「芥川龍之介の河童」でライブは折り返し地点に。

(ちなみに、「マスタースパーク」と続く3曲は、それぞれ「霧雨魔理沙」と”カップリング相手”として語られるキャラクターたちの曲だ。これに気づいた時「そんな、東方アレンジライブ特有の"文脈"と"カプ厨"セットリスト作ってきてるけど、信じられない この人達本当に東方のライブやりに来たんだ」と震えてしまった)

 

「本当、東方のライブはいつもより激しいな」と岸田は話す。ichigoも「大阪もアツかったし、名古屋も結局アツかった、仙台もそうだしなんか全部暑かった」と続けてこのMODツアーを振り返る。

岸田の「今回は東方オンリーライブなので、いつもライブではやらない珍しい曲をやります」という前置きで始まったのは「二色蓮花蝶(にいるれんかちょう)」。確かに、オリジナルも織り交ぜた通常のセットリストでは選ばれない、それでも間違いなく岸田のアレンジの中では名曲に数えられる1つ。

そして続いたのが「自由への賛歌」。イントロがかかった瞬間、フロアからは驚嘆の叫びが上がり、異様とも言える熱狂に包まれた。この曲も前曲に続き、このMODツアー以前にライブで披露されたことは一度もない。更に、岸田教団の中では珍しい「他サークルからの提供曲」だ。提供元のサークル「凋叶棕」は、数あるサークルの中でも東方の世界観を実に重視するタイプで、岸田教団の楽曲とはある意味で一線を画している。であるが故に、岸田の曲の中でも特異な曲であり、ファンの中でも人気が高い。

(更に言うとこの曲は岸田のミスで原曲のフレーズを入れ忘れており、東方アレンジと言っていいのかなんというかわからない曲だったりもして、ライブで披露されることは無いだろうと私は思っていたのだ)

そんな初披露の曲で、ichigoはいきなり最初のサビでマイクを観客に向ける。

「風になる 風になる」

フロアは完全に応えた。7年前に発表された、ライブで一度も披露されていない曲を、ファンはずっと待ち望んでいたのだ。

私も自然とサビのフレーズが口から出てきたことに驚いた。フロアとステージは完全に一体化し、全員が風になった瞬間だった。

 

狂乱するフロアを落ち着かせるように、スローペースなイントロの「彼岸帰航」でフロアの熱はギュッと圧縮される。hayapiの独壇場とも言えるギターソロが魅力の曲だ。

そして続く定番曲「Desire Drive」での開放、この曲では岸田教団のライブ曲では唯一といっていい「タオルを回すタイプの曲」だ。一度圧縮された熱を吹き飛ばすようにみんなタオルを回す。それに負けじとステージも応える。

本当に、本当に楽しい瞬間だった。

 

 

「コレまでの曲は、平成の岸田教団」「こっからは令和の岸田教団なんで」という岸田のMCをから超えて始まったのが「フォールオブフォール(MOD)」だ。

最新の東方アルバム「MOD」について岸田は次のように語る。「ゲーム文化では当たり前にやってるMOD≒Modifyするというのを、音楽でもやったらいいんじゃないかと思った」「昔作った曲の中から古すぎると感じたものを選んだ」「けど、黎明期の雰囲気をもう一度、というのは意識してなくて、勉強を詰んだら此処に戻ってきた」

 

私がMODというアルバムの中でも特にModifyされていると感じたのが、この「フォールオブフォール」と続く「信仰は儚き人間の為に」だ。イントロは勿論のこと、曲の目指すテーマが、完全に先に進んでいる。コレこそが本来やりたかった、本当の岸田教団の「フォールオブフォール」「信仰は儚き人間の為に」だというのが感じられた。

ライブで一番聞きたいと思っていた曲はコレで、ライブアクトでそのテーマは更に完成され、更に先に進んでいた。岸田教団はずっと、ずっと先に進んでいるバンドだ。音と、思想と、進む先の光は常に先にある。だからこのバンドの信者で居られるのだ。

カヨコのピアノから入り、ローに入るメロディとサビの伸びやかさが気持ちいい「Gusty girl」、落ち着いたフロアを再点火する、さらにスピード感のある曲としてMODのされた「妖々跋扈」。そして、元々圧倒的人気曲であった「ネクロファンタジア」のMODバージョン。

「ネクロファンタジア」は「紫」というテーマカラーが紫のキャラの曲だ。だが、岸田教団で「ネクロファンタジア」が演奏されるときは、照明は常に「赤」から入って「青」と混ざるという効果をかける。「紫」というキャラクターに対しての岸田の思う感情がそこにはあるのだろう。

 

曲の終了に食い込むかのように岸田のMCが入る。「本当に12年間続くと思っていなかった。最後の曲です」

MODのトラック1を飾る「幽雅に咲かせ、墨染の桜」、待ってましたと言わんばかりにフロアは残るすべての力をステージにぶつけ、演者もそれに応えた。

最高のライブアクトを終え、メンバーはステージを去っていく。間髪入れずに始まるアンコールの声。これだけでは終わることは出来ない。

 

アンコールに答え再登場した岸田は、12年前の話を始めた。

彼らは12年前にも一度、このステージに立っている。

2007年03月21日。

東方Project」の音楽をアレンジする同人音楽サークルによるライブ、「Flowering Night」。

そのステージに岸田教団&THE明星ロケッツは立っていた。

このバンドはそのライブイベントのために結成された、ある意味企画バンドであり、元々長く存続させるつもりのものではなかった。岸田「そんなにお客さん居ないよーって聞いていたのに、幕上がったらお客さんいっぱい居て」ichigo「今は客席の奥まで視えるけど当時は(圧倒されてしまって)何も見えなかった」と、二人は振り返る。

そして、岸田から「またフラワリやるらしいので、出ます」と、Flowering Night2020参戦の告知。あの岸田が、岸田教団が、川崎CLUB CITTA'で、FloweringNight参加の告知をする。既に告知されている内容だったとしても、声を上げざるを得なかった。

 

「最初のフラワリで演奏した曲をやります」と告げて、始まったアンコール最初の曲は「夢は時空を越えて」。

12年前、その夢が、その熱狂が、12年もの時空を超えることを、一体誰が想像できただろうか?

続く「SuperSonicSpeedStar」も同じく12年前のこのCLUB CITTA'で披露された曲。タイトル通りの疾走感あるサウンドは、この12年のバンドの進化によって更に厚みを増し、勢いは更に加速している。

 

そしてこの日最後の曲、このバンドの名前にもなっている「明星ロケット」が始まる。

狂乱状態のフロアが更にもう一段上がる。ichigoの「飛べ!!」で全員がその熱を爆発させた。

 

最後はメンバー全員手をつないでのファンへの感謝の言葉「有難うございました」で、川崎CLUB CITTA'は幕を閉じた。

最初は企画バンドとして集まった5人、2007のステージの不甲斐なさはずっと心に残っていた、と「弾幕祭」のMCでichigo話していた。誰も、当事者でさえも、このバンドが12年間続いて、今同じ場所に立っているなんて、誰が、誰が想像できただろうか。

 

 

ライブハウスから出る帰り道で、別のファンが「俺は『東方輝針城(2013年発売)』までしか買ってなかったんだよなあ」「またやろうかな」と話していた。

聞いたか、岸田教団。あなた達のアクトは、確実に東方アレンジライブとして最高の効果を発揮している。

私はずっと、プロにまで到達して岸田教団が未だ東方アレンジを続けていることに疑問を感じていた。なぜなら、もう彼らなら態々東方アレンジという「高下駄」を履かずとも、立派に成長した力を持っているのにも関わらずだ。

 

ただこの日、このライブに行ってそれには意味があることを知った。

彼らの東方サークルとしての力はまだまだ強くなっていく。12年経って、彼らは未だ遠く先を目指している。

 

ーーー

 

おい、お前。其処のお前だよ。俺の言葉がわかるんだろ。

 

昔聞いてた、今聞いてない、CDは買ってた、ライブ入ってない、フラワリも何年前、プロになって変わった………。

 

いいからFlowering Night2020にいけ。チケットを待て、そして取れ。

岸田教団という最高峰の東方アレンジサークルの最高のアクトが見れるんだ。

お前なら分かる。今の岸田教団が最高で、このバンドは最高記録を更新し続けていることを。

俺の言葉がわかるお前になら分かるはずだ。

 

間違いない。俺が保証する。岸田教団&THE明星ロケッツは最高のバンド、わからされた俺が言うんだ。

 

だから行こうぜ、岸田のライブ。また一緒にさ。