オチがなくてよい日記

思っていることをできるだけ取り繕わない形でかくばしょです。日記はむりなので週記くらいにしたい。

『すずめの戸締まり』を観た話

『すずめの戸締まり』を観てきました! 公開初日!早朝!0時放映ではない!!

えげつない上映数 知り合いのディスコード鯖に貼ったら「地方都市の電車よりあるね」ってヘイトスピーチ飛んできて泣いちゃった

観た勢いでウオオオとふせったー君に書いた感想+追記をここに書いておきます。パンフと来場者特典の「新海本」も読んだので、記事の最後の方に読んだ上での諸々も少し書き足してます。

 

 

 

すずめの戸締まり。初見感想ですがかなりエンタメに振られていて、新海君の性癖が丁寧に折り畳まれていました。明確に出ていたのはJKを人間椅子に座らせたいという欲望だけですね。いやそれ原液としてだいぶ濃くない??薄めなくて大丈夫???

面白かったです。

新海君は昔からエロゲのシナリオ書くの得意だけど、今回もまた上手いですねほんと。ツボを押さえている。

たぶん今回はパソコン版の移植じゃなくて、最初から全年齢版としてドリキャスでリリースされてたタイトルですね。攻略ルートがほとんどない一本道ゲーとしてソフトハウス側が新機軸を開拓しようとしたけどあんまりユーザーがついてこなくてシリーズが出なかった『すずめ』が原作ですね。映画に当たって『すずめの戸締まり』と改題されています。一部のコアなファンが環おばさんルートありのX-rated版を求める署名活動をしていたのも懐かしいですね。

冗談はさておき、今回は本当にエンタメに振ってあって、『君の名は。』や『天気の子』にあった「えっと、エロゲオタクの俺らは大丈夫だけど、これ世の中にお出しして大丈夫???加工足んなくない???」「今ここでCG回収しました?????」みたいな、エロゲにありそうなシーンがほぼほぼ無かったです。新海君っぽくない。

それが悪いのかというとそうではなくて、今回の話自体が直近二作と比べるとそこそこに話が入り組んでおり、そこをわかりやすく書くために、作劇上必要でないシーンがほとんどない構成になっていました。特に前半はかなり「ステージクリア」に話を振っていて、癖を感じる瞬間がすくなかったですね。

そのおかげで、入り組んだ内容ながらかなりわかりやすく、『君の名は。』よりもエンタメしていたように思えます。サクサクRTA

これは憶測ですが、前半を観ていて「ふつうの映画だな」と感じたのは、劇伴曲がたぶんRADWIMPSじゃない、陣内さん中心の曲が多かったからではないかなと思っています。いつものMV演出も今回やらなかったですしね。(『君の名は。』以降、多くの夏公開アニメ映画が青空とMV演出を繰り広げた中、「僕は一ぬけしますね」という新海君の明確な意志を感じました)

そしてもう一つ、そういうベチャベチャしたエロゲみたいなシーンを極力選ばなかったのは、見る人によってはかなり強いトラウマを呼び起こす「被災地」の鮮明かつ真摯な表現をしたので、そこをボカすようにはしたくないからかなと感じました。

作中何度も流れる緊急地震速報の音、土砂崩れによって町ごと封鎖された先にある廃校、津波に流され土台だけになった町。とどめに出てくる、常世の燃え盛るがれきの山まで出してきたときは、結構こころにくるものがありました。おー、そこまでやるか、やるのか、やるんだね、と。(あれは幼少期のすずめが見た、心の中にずっとしまっていた映像なので、戸締まりをする前に思い出す必要があったのでしょう)

様々な人がツイッターで話していますし、公式も強めにアラートを出していますが、人によってはかなりトラウマを思い起こされる壮絶な映像が流れるので、耐性がない、自信がないという人は是非なんかしらの対策を取ってから観に行ってください。そういう人に向けての映画になっているので、そういう人にこそ見てほしいけど、すごく難しい……

それぞれのシーンが本当に真摯に、アニメなのに現実みたいに――むしろアニメであるからこそ、観客それぞれがが過去に見た記憶に一番近い映像として映し出される。新海誠は本当にアニメの中で現実を描写するのがうまい。

そういうかなりウワッってなる、一歩間違えれば「グロく」なったしまうシーンを、何秒まで見せられるか、何秒までなら観客が耐えられるのか。その感覚が新海誠という人は本当に優れているなと思いました。黒塗りの日記のシーン、あと一、二ページ続いていたら、やっぱ人間は耐えられないですよ。*1

その点で今作はかなりドキュメンタリーのように見える部分が多く、その上である程度いつもの性癖描写を削ったのだろうと勝手に感じています。

 

今作でもっとも印象に残ったのは、草太や草太師匠の爺が問う「命が惜しくないのか」に、すずめが「死ぬのは怖くない」と“即答”するところです。

これは本当に憶測でしかないですが、この台詞は本作を作るに当たって(あるいは前二作を作るに当たり)行った311被災者へのインタビューで出てきたワードなんじゃないかな、と思ってしまいました。生が希薄になってしまうような感覚。

最後にすずめは、要石になってしまった草太を引き抜くシーンで「やっぱり生きていたい、死にたくないよ」と言います。トラウマになっている事実に向き合う、どうしてもそうだと認めたくないことを、自分の中で矮小化してこころにとどめてしまう、そういう人間の心の動きに対して「向き合う」といわずに「戸締まり(をする)」と表現するのは、本当に良いなと感じます。

自転車に乗りながら環おばさんが「(あんなひどいことを言ってしまったけれど)それだけじゃない、それだけじゃないんよ」というのが、なんか、すごいよかったですね。抑え込んでいる感情は吐き出せばいいものでもない、吐き出したものが自分の全てというわけでもない、それだけじゃないんよ、無かったことにはできないけど、ひっくるめてなんよ、という。

 

全体的な分かり易すぎるくらいにわかりやすいし、最後のすずめとすずめ同士の会話シーン、JKすずめのセリフがこの映画をすべて解説してしまっていて「え、ちょ、流石に言葉にしすぎでは???」と思うところもありましたが、エンタメに寄せるということはこういうことなのかなと思いました。ドキュメンタリーでありながらエンタメ。まああの綺麗な星空出されたらあの台詞シーンも許せちゃうからずるいよ。

「戸締まり」という表現が本当に秀逸な映画だと思いました。新海誠氏が今必要だと感じたのは、戸締まりをして「いってらっしゃい」を言うことだと、そう思ったんでしょうね。

3Dだろうけど走る椅子の作画マジ大変そうだな!とか後戸と地震ともろもろの結びつけうまいね~とか草太くんの祝詞ってあれ地鎮祭のときにいうやつだよね?とか草太くんの「すずめさん!」の言い方なんか内田雄馬氏の(モノマネをする松岡禎丞氏の)「ねえさん!」みたいだなとか東方側の人間としては「絶対さとまいのネココスプレイラスト流行るじゃん」とかいろいろ思いましたがそういうのとか設定とか日本神話的な話は詳しい人がいっぱいかくだろうからそちらにお任せという感じで!今からパンフ読んだり小説版読んだりするので細かい台詞とか間違ってたらごめんなさい!とっても面白かったです!!




いやでも草太くんの思い出がすずめに流れ込んでくるシーンで俺たちが(たぶん)見てないすずめに帽子かぶせてもらうシーンあったの見逃してないからな????????そこはもうコナンくんが蘭ねえちゃんに風呂入れてもらうシーンで目覚める癖と同じだからな????????新海君逃げられると思うな?????????ぜってえエロゲー批評空間でレビューつけてやるから覚悟しろよ??????

以上です。

 

 

パンフとか新海誠本とか映画サイトのレビューとか見ての少し追記

 

新海誠、背負ってる~~~~~~~~~!!!!!!背負った上できちんとデキる男、俺たちの新海 でもこれは大変なことですよ

僕は「ゲームクリア」って書いちゃいましたが、もっとわかりやすく「ロードムービー」で良かったですね 『星を追う子ども』のリベンジ、という話をしている人がいて、たしかに~となりました 新海くん、成長している ほんとすごい 

おそらく上映初期は緊急地震速報のことがずっと話題になるだろうけど、マジでその先にあるものがあるから見てくれという気持ちになるな……そこで日和ったりしないのが新海くんなんすよ な? 俺はどのタイプの彼氏面なの

新海誠の集大成、最高傑作」みたいなキャッチコピー、広告代理店の仕事なので話半分できいてたけど、たしかに「『君の名は。』で天災を防いで、『天気の子』で天災を受け入れて、『すずめの戸締まり』で天災が起きたあと、それが当たり前にある世界で」という話ならもうそれは集大成っすねそれはとなりました

ネタバレ含まない範囲でのMAXおすすめはこれで、これなのでとりあえずエロゲ臭無理だった人(特に天気の子でしんどかったという一般の人はいるよね!ごめんねウチの新海くんが!)にはぜひ勧めたいですね

最初から全年齢って言っちゃったけどもしかしたらこの魔法少女の方針でもともと実はめちゃくちゃミミズが出てくる触手ゲーだったかもしれない 映画化するときにかなり設定の大枠だけ残して全部変えたやつね 

 

あとはいろんな人がいろいろ語るだろうからそれを眺めつつもう一回くらい見に行きたいかなーと思いました!いじょうです!

*1:ここは本当に耐えられる時間が人それぞれで、僕は大丈夫だった、という話でしか無いとは思っています。ただ、それが露骨にならない、作品の論旨が損なわれない「ギリギリのライン」というものは存在すると思っていて、新海誠氏はその最大公約数が感覚でわかっている人だな、という意味合いで書いています。ここは人それぞれなので、「○○さんがそうでもないって言っていたから観たけど辛かった」みたいなことにしてしまうと、とても残念だなと思います。自分で選んで見に行ってほしい